保育士試験では、乳幼児の栄養に関する事柄だけでなく、妊娠中の女性や授乳中の女性の栄養についても、毎年1問程度出題されています。
妊産婦のための食生活指針
下記は、「妊産婦のための食生活指針」について(厚生労働省)から、ポイントを抜粋&加筆しています。
妊娠前から、健康なからだづくりを
- 妊娠前に( ② )、肥満はありませんか。健康な子供を産み育てるためには、妊娠前から( ③ )のよい食事と適正な体重を目指しましょう。
①妊娠前 ②痩せすぎ ③バランス
「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと
- 妊娠期・授乳期は食事バランスや活動量に気を配り、( ② )を調節しましょう。また( ③ )の変化も確認しましょう 。
①主食 ②食事量 ③体重
妊娠期には、母体のエネルギー消費に加えて、胎児の発育のためのエネルギーを確保する必要があるので、
- 妊娠初期(16週未満)・・・+50kcal
- 妊娠中期(16~28週未満)・・・+250kcal
- 妊娠後期(28週以降)・・・+450kcal
が付加量として示されています。
また、授乳期には、母乳の算出のためのエネルギーが必要なため
- 授乳期・・・+350kcal
が示されています。
エネルギーを取る際には、脂肪エネルギーの割合が高くならないように、脂質が少なく、たんぱく質の多いご飯からの摂取が望ましいとされています。
不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
- 緑黄色野菜を積極的に食べて( ② )を取りましょう。 特に妊娠を計画していたり妊娠初期の人は( ③ )発症リスク軽減の為、葉酸の栄養機能食品を利用することも勧められています。
①ミネラル ②葉酸 ③神経管閉鎖障害
☆神経管閉鎖障害の発症リスク低減のために葉酸摂取を☆
- 葉酸は、ビタミンB群に属する水溶性ビタミン
- 造血に作用し、不足すると貧血が生じることがある
- 非妊娠時の推奨量240μg+妊娠期負荷量200μg
- 妊娠1か月以上前~3か月までの間、葉酸をはじめとしたビタミンなどを多く含んだバランスのいい食事をすることにより、二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減
- 食品に加えて、栄養補助食品から1日400μg(0.4g)の葉酸を摂取することで発症リスクを低減
- 1日当たりの摂取量は1mgを超えないように
からだづくりの基礎となる「主菜」は適量を
- 肉、魚、( ② )製品をバランスよく摂取しましょう。赤みの肉や魚などを上手に取り入れて貧血を防ぎましょう。ただし( ③ )にはビタミンAの過剰摂取に気を付けましょう。
①からだづくり ②大豆 ③妊娠初期
妊娠後期になると、血液量は妊娠前に1.5倍になります。出産により、大量の血液を失う他、母乳は血液から造られるので、妊娠中~授乳期にかけて鉄欠乏性貧血になりやすくなります。
- 植物性食品からも鉄分を摂取することはできますが、非ヘム鉄は吸収率が高くないため、動物性食品からヘム鉄を摂取する方が効率的です。
- 植物性食品(大豆、ひじき、ほうれん草など)から非ヘム鉄を摂取する場合、たんぱく質やビタミンCと一緒に摂取すると効果的です。
- 動物性食品から鉄分を摂取する際には、ビタミンAの取り過ぎに注意が必要です。
ビタミンAは細胞分裂に必要な栄養素で、妊娠中は非妊娠時より多めにおることが推奨されていますが、過剰摂取によって胎児に奇形が現れるリスクがあります。
ビタミンAは、カボチャやニンジンなどの植物からβカロテンとして取ることがおすすめです。(βカロテンとして取った場合、必要な量だけがビタミンAに転換されます。)
肝やレバーなどに含まれるレチノールから取る方法もあるのですが、少量の肝やレバーでも多量のビタミンAを含んでいることがあるので、注意が必要です。また、マルチビタミンなどのサプリメントでもビタミンAの取り過ぎになることがあります。
特に、神経が盛んに作られる妊娠3ヶ月までは過剰摂取に注意が必要です。
牛乳・乳製品などの多様な食品を組み合わせて、カルシウムを十分に
- 妊娠期・( ② )には、必要とされる量のカルシウムが摂取できるように偏りのない食習慣を確立しましょう 。
①カルシウム ②授乳期
妊娠期には、カルシウムの吸収率が上昇するため、カルシウムの負荷量は特に設定されていませんが、妊娠前から十分なカルシウム摂取を心がけることが大切です。
牛乳・乳製品からは良質のたんぱく質を摂取することができるので、『妊産婦のための食事バランスガイド』では、妊娠末期・授乳期は牛乳・乳製品が1つ付加されています。
妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に
- 体重の増え方は順調ですか。望ましい体重増加量は、( ② )の体型によっても異なります。
①体重 ②妊娠前
「妊娠初期」ではなく、「妊娠前(非妊娠時)」の体型によって異なります。
一般に妊娠前のBMIが
- 18.5未満(やせ)・・・+9~12kg
- 18.5~25.0(普通)・・・+7~12kg
(18.5に近い場合は12kg、25.0に近い場合は7kgに近い方が望ましい) - 25.0以上(肥満)・・・個別対応
(5kgが目安だが、25.0を著しく超える場合には個別対応)
BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算します。
- 妊娠前の体格が「低体重(やせ)」「ふつう」であった女性で、妊娠中の体重増加が7kg未満だった場合、低出生体重児を出産するリスクが高い。
- 低出生体重児は、成人後に糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発生しやすい。
- 国民健康栄養調査では、20代・30代の女性で「低体重(やせ)」の割合が増加傾向にある。
- 人口動態統計の結果では、低出生体重児の割合は増加傾向にある。
20代女性は、男性や他の年代の女性に比べて、「低体重(やせ)」の割合が高いです。
(平成25年度国民健康栄養調査結果より)
そのためか、妊娠中、太るのが嫌!お腹が出るのが嫌!で体重増加を抑えてしまう女性が多く、低出生体重児の出生割合も、他の先進国に比べて高くなっています。
母乳育児もバランスの良い食生活のなかで
- 母乳育児はお母さんにも赤ちゃんにも( ② )の方法です。バランスのよい食生活で、母乳育児を継続しましょう 。
①母乳 最良
たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう
- 妊娠・授乳期の喫煙、( ② )、飲酒は胎児や乳児の発育、母乳分泌に影響を与えます。喫煙、禁酒に努め、周囲にも( ③ )を求めましょう 。
①害 ②受動喫煙 ③協力
煙草の煙に含まれる有害物質は、血管を収縮させ、子宮胎盤循環血液量を低下させ、胎児が低酸素状態になります。
妊婦が喫煙者だった場合、一般の妊婦と比べ
- 出生体重は平均200g少ない
- 低出生体重児が生まれる頻度が約2倍
- 自然流産の発生率約2倍
- 早産率約1.5倍
- 周産期死亡率約1.4倍
百害あって一利無しです。赤ちゃんが危険な状態になることはもちろんですが、母体も危険になります。
母親の血中のニコチン濃度は、父親など生活をともにする家族の喫煙による受動喫煙によっても増加します。母乳のニコチン量が多くなるほか、父母の喫煙による乳幼児の受動喫煙も問題になります。
- 小児呼吸器疾患の頻度約3倍
- 乳児突然死症候群約5倍
妊娠期にアルコールを常用すると、知能障害、発達障害を伴う胎児性アルコール症候群の子どもが生まれる可能性があります(1~2万人に1人程度)。
- 妊娠初期の飲酒は、奇形
- 妊娠末期の飲酒は、発達遅延や中枢神経系の機能不全
と関連があるとされています。
また、アルコールにたばこが加わると、脳の形成異常が起こることが動物実験で確認されています。
授乳期の飲酒は、母乳分泌の減少により、乳児の成長が抑制されたという報告があります。
お母さんと赤ちゃんの健やかな毎日は、からだと心にゆとりのある生活から生まれます
- 赤ちゃんや家族の暮らしを楽しんだり、毎日の( ② )を楽しむことは、からだと( ③ )の健康に繋がります。
①ゆとり ②食事 ③心
過去問
○×組み合わせ問題・穴埋め問題の両方で出題されています。
平成26年度本試験子どもの食と栄養問13
次の文は、「妊産婦のための食生活指針」(「健やか親子21」推進検討会報告書)(平成18 年:厚生労働省)に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- 妊娠期・授乳期は、食事のバランスや活動量に気を配り、食事量を調節しましょう。
- 赤身の肉や魚などを上手に取り入れて、貧血を防ぎましょう。
- 妊娠後期にはビタミンAの過剰摂取に気をつけて。
- 望ましい体重増加量は、妊娠中の体型によっても異なります。
(選択肢省略)
正答:A○ B○ C× D×
平成24年度本試験 小児栄養問8
次の文は、「妊産婦のための食生活指針」(厚生労働省)に関する記述である。( A )〜( C )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。・不足しがちなビタミン・ミネラルを、( A )でたっぷりと
・( B )を積極的に食べて葉酸などを摂取しましょう。特に妊娠を計画していたり、( C )の人には神経管閉鎖障害発症リスク低減のために、葉酸の栄養機能食品を利用することも勧められます。(選択肢省略)
正答:A副菜 B緑黄色野菜 C妊娠初期
妊産婦のための食生活指針ミニテスト
理解を深めるための、穴埋めと○×のミニテストです。
簡単な問題もあり、油断しているとうっかり間違える問題もあり・・・
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