学童期の子どもたちは小学校や中学校に通っているので、所在を確認しやすいのですが、小学校入学までの子どもたちは、所在の確認が難しいという問題点があります。
幼稚園や保育園に行っていれば、第三者の目がありますが、家庭保育の場合はとくに「虐待の早期発見」や「生存確認」が難しくなることも(+_+)
慣れない育児をスタートしたばかりの新米ママさんたちが孤立しないで子育てできるように、また虐待の早期発見や未然予防ができるように、「乳児家庭全戸訪問事業」「養育支援訪問事業」が期待されています。
- 養育支援訪問事業 ・・・○(1問程度出題)
- 乳児家庭全戸訪問事業 ・・・△(ときどき出題)
「養育支援訪問事業」とは?
実施主体は、「市町村」です。
「養育支援訪問事業」は、様々な原因で養育支援が必要となっている家庭を訪問して、子育て経験者等による育児・家事の援助や保健師等による具体的な養育に関する指導助言等を行うことによって、これぞれの家庭の抱える養育上の問題を解決したり軽減を図ったりする事業です。
ここでいう「様々な原因」は、育児ストレス、産後うつ病、育児ノイローゼなど多岐にわたります。
「養育支援訪問事業」の対象の家庭と事業内容
- 乳児家庭全戸訪問事業等により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(要支援児童)
- 保護者に看護させることが不適当と認められる児童(要保護児童)
- その保護者または出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる児童(特定妊婦)
「養育支援訪問事業ガイドライン」には次の例が載っています。
- 若年の妊婦及び妊婦健康診査未受診や望まない妊娠等の妊娠期からの継続的な支援を特に必要とする家庭
- 出産後間もない時期(おおむね 1 年程度)の養育者が、育児ストレス、産後うつ状態、育児ノイローゼ等の問題によって、子育てに対して強い不安や孤立感等を抱える家庭
- 食事、衣服、生活環境等について、不適切な養育状態にある家庭など、虐待のおそれやそのリスクを抱え、特に支援が必要と認められる家庭
- 児童養護施設等の退所又は里親委託の終了により、児童が復帰した後の家庭

R3前期 子ども家庭福祉 問 10
次の文は、「養育支援訪問事業実施要綱」(平成 29 年4月3日 厚生労働省)の一部である。(A)~(D)にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
3 事業の内容 対象家庭を訪問し、以下の内容を実施する。
(1) 妊娠期からの(A 継続的)な支援を特に必要とする家庭等に対する安定した妊娠出産・育児を迎えるための相談・支援。
(2) 出産後間もない時期(概ね1年程度)の養育者に対する(B 育児不安)の解消や養育技術の提供等のための相談・支援。
(3) 不適切な養育状態にある家庭など、虐待のおそれやそのリスクを抱える家庭に対する養育環境の維持・改善や児童の(C 発達保障)等のための相談・支援。
(4) 児童養護施設等の退所又は里親委託の終了により児童が復帰した後の家庭に対して(D 家庭復帰)が適切に行われるための相談・支援。
対象家庭の見つけ方
養育支援訪問事業の対象となる過程は、どのようにして見つけるのでしょうか。 養育支援訪問事業の対象となる「子育てに対して不安や孤立感等を抱える家庭」は
- 生後4か月までに行われる乳児家庭全戸訪問事業
- 母子保健事業、妊娠・出産・育児期における関係機関からの通告
などの機会を活用して、見つけています。
- 若すぎる妊娠、望まない妊娠、妊婦健診未受診
- 育児ストレス、産後うつ状態、育児ノイローゼの相談
- 食事、衣服、生活環境が不適切で虐待の恐れがある
などの状況の人は要チェック!支援が必要かどうかを判断します。
訪問者の資格
- 専門的相談支援→保健師、助産師、看護師、保育士、児童指導員等
- 育児・家事援助→子育てOB(経験者)、ヘルパー等
「必要な支援の提供のために複数の訪問支援者が役割分担の下に実施する等、効果的に支援を実施することが望ましい」と、されています。
ミニテスト
「乳児家庭全戸訪問事業」とは?
「こんにちは赤ちゃん事業」ともいいます。
「乳児家庭全戸訪問事業」の対象家庭
赤ちゃんのいる「すべての家庭」が対象です。原則として、生後4か月を迎えるまでに訪問します。
「新生児訪問」と「乳児家庭全戸訪問事業」
「乳児家庭全戸訪問事業」は児童福祉法に基づく事業で、母子保健法に基づく「新生児訪問」とは別の事業です。
本事業(乳児家庭全戸訪問事業)はすべての乳児のいる家庭が対象であり、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行い、必要なサービスにつなげる事業である。一方、母子保健法に基づく訪問指導は、母子保健の観点から乳幼児のいる家庭を対象として、必要な保健指導等を行う事業である。 このように、両事業は法的な位置づけや、第一義的な目的は異なるものの、いずれも新生児や乳児がいる家庭へのサポートを行うものであり、密接な関係にある。このため、効果的かつ効率的な事業実施の観点からも、母子保健法に基づく新生児訪問等の乳児に対する訪問指導を実施している市町村の判断により、これらの訪問指導等と併せて本事業を実施することとして差し支えない。
市町村の判断により、「新生児訪問(母子保健法)」と「乳児家庭全戸訪問事業(児童福祉法)」を同時に行うことも可能です。

手厚い市町村は、新生児訪問とは別に行っているようです。(例:0~1か月に新生児訪問指導→2~4か月に乳児家庭全戸訪問事業)
乳児家庭全戸訪問事業が「行われない」家庭の場合
「里帰りが長引いて、自宅に戻るのが生後4か月以降になってしまう」「生まれてすぐ病気が分かり長期入院している」「家に来てほしくない(事業の趣旨を説明しても同意を得られない)」など、色々な事情がある場合もありますよね・・・。 そういう場合には、「訪問の対象としない」ということもできます。

- 里帰りが長引いている →里帰り先の市町村で、乳児家庭全戸訪問事業を実施することも可能
- 里帰り・入院の長期化 →自宅に戻り次第、なるべく早期に訪問
- ケース対応会議は、乳児全戸訪問事業担当者、本事業担当者、市町村の母子保健担当者、児童福祉担当者など。必要に応じて、養育支援訪問事業中核機関や子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)調整機関(以下「調整機関」という。)の職員等が参加。 →支援が必要な家庭には、養育支援訪問事業や母子保健事業等で支援する。

乳児家庭全戸訪問事業がスムーズに行えるよう、妊娠中から事業について紹介したり、家庭を訪問する際に絵本やおもちゃを配るなど、自治体ごとに工夫しているらしいです(・_・;)
乳児家庭全戸訪問事業の実際
ちなみに平成31年度では、94.7%の家庭を訪問! 数で言うと、対象となる85万家庭のうち80万家庭に訪問しています。 多いような、少ないような・・・。5万人の赤ちゃん、20人に1人の赤ちゃんは生後4か月までの間に訪問してもらえなかったことになりますね・・・。 訪問できなかった理由は、「日程の調整ができなかった」「訪問していたが不在だった」「転居していた」が上位ですが、若干「同意が得られなかったため」というのもあるようです。

乳児家庭全戸訪問事業の訪問者
訪問者の資格は特に決まってはいません。 ガイドラインでは、「保健師、助産師、看護師の他、保育士、母子保健推進員、愛育班員、児童委員、母親クラブ、子育て経験者等から幅広く人材を発掘し、訪問者として登用」となっていますが、市町村独自に「専門職に限る」などの資格要件を決めることも可能とされています。 ※実際は、保健師がの訪問がほとんどです。(下記グラフはH27年度。H31・R1年度も多きな変化はありません。) 乳児家庭全戸訪問事業を実施した市町村のうち、保健師が訪問した市町村が93.5%。

実施内容
ということで、保育士として乳児家庭全戸訪問を行う人に自分がなったところをイメージして考えてみましょう♪ 乳児家庭全戸訪問事業では、どんなことをしているのでしょうか? 訪問して何を見ているのでしょうか?
- 育児に関する不安や悩みを聞く →親子の状態を考慮しながら、受容的に話を聞きます。
- 子育て支援に関する情報提供 →「地域子育て支援拠点事業等の実施場所一覧表」や「母子保健事業の一覧」を渡します。
- 赤ちゃんとママ(保護者)の心身の健康状態や、養育環境の把握 →訪問した時の赤ちゃんの様子、ママの様子、生活環境の様子、同居家族や育児を手伝ってくれる人・ママの相談相手の有無などを把握します。
- (支援が必要だと判断したら) 関係機関との連絡・調整、提供できるサービスの検討
乳児家庭全戸訪問事業ミニテスト
保育士試験対策+αテスト
乳児家庭全戸訪問事業と養育支援訪問事業について、さらに理解を深めるためのミニテストです。
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