離乳食が始まるまで(生後5か月ごろまで)の赤ちゃんは、乳汁栄養で育ちます。
乳汁栄養は大きく分けて二つ
- 母乳
- 人工栄養(育児用ミルク)
です。
人工栄養(育児用ミルク)を使用せず、母乳のみで育てることを「完母」といいますが、保育士試験では「母乳栄養児」という言葉が使われています。
母乳栄養にはメリットも多く、WHOでも推奨されているのですが、デメリットもあります。また、生まれるまで母乳がしっかり出るかどうかは分からないので、産前・産後を通して、ママを悩ませる問題でもあります。
そのため、育児用ミルクの身で育つ子(人工栄養児)、母乳と育児用ミルクで育つ子(混合栄養児)もいます。
「母乳じゃなきゃ、かわいそう」といった周囲の人の何げない言葉が、育児が始まったばかりのママを追い詰めることもあります。乳汁栄養は、母乳が推奨されていますが、母乳でなければいけないということはありません。正しい知識を持って、ママたちをサポートできる&自信を持って乳児さんの保育に取り組めるようにしましょう。
母乳育児のメリット&デメリット
母乳の栄養
母乳には様々な栄養が、赤ちゃんに発達に適した割合で含まれています。
その成分や働きについては、あまり出題されていませんが、興味のある方のために・・・
たんぱく質
- カゼインが少なく、乳性たんぱく質が多い
→消化がスムーズで、赤ちゃんの成長に必要な量含まれています。 - タウリン(アミノ酸の一種)が含まれている
→新生児の目や脳の発達に役立ちます。
カゼインについては、たんぱく質のところでも解説しています。なんか、聞いたことあるけど忘れちゃった!って人はこちらもどうぞ。
「レンニンがカゼインを凝固する」ってやつですね。
脂質
- 脂溶性ビタミンの吸収に役立つ
- 必須脂肪酸が、赤ちゃんの体や脳の発育を促す
- コレステロールが高い
→食事からの脂肪の摂取をコントロール
→将来的にコレステロール値を低くする
母乳が将来の生活習慣病の予防になっているって、すごいですね!
糖質(ほとんどが乳糖)
- ビフィズス菌を増やす
- カルシウムの吸収を促す
- 脳の中枢神経発達に関与
母乳栄養児の腸内のビフィズス菌の割合は、人工栄養児・混合栄養児のそれよりも高くなっています。
他にも、ミネラルやビタミンが、消化に負担をかけない程度にバランスよく含まれています。
母乳で感染症予防?母乳で感染症が移る?
母乳には、免疫グロブリンA(IgA)、ラクトフェリン、リゾチームなどの感染予防物質が含まれています。これにより、感染症にかかりにくくなったり、かかってしまった場合も重症化しにくくなります。
免疫グロブリンA(IgA)
- 腸粘膜を覆い、細菌・ウイルス・アレルゲンなどの侵入を防ぐ
- 呼吸器系の粘膜の保護にも効果あり
- 初乳に多い
ラクトフェリン
- 鉄分を含むたんぱく質
- 大腸菌やブドウ球菌から鉄を奪って、繁殖を抑制
- 初乳に多い
リゾチーム
- ウイルス・細菌からの感染を予防
- ビフィズス菌(善玉菌)の発育を促進し、大腸菌(悪玉菌)を減らす
母乳は、赤ちゃんの感染症予防に一役買ってくれますが、例外もあります。
HIVやサイトメガロウイルスなど一部の感染症が赤ちゃんに移行してしまうことがあるのです。このような感染症にかかっている場合には、医師と相談のうえ、人工栄養(粉ミルク)で育てることになります。
また、授乳中の薬の服用は、一般的には赤ちゃんには影響はないとされていますが、薬の成分の多くは母乳中に分泌されています。キノロン系(クラミジア・マイコプラズマなどの細菌に有効)の抗生物質をママが服用すると、母乳を飲んだ乳児に意識障害が起きることがあります。
母乳栄養児はどうして、ビタミンKが不足しやすいの?
血液を凝固させる性質のあるビタミンK。実は、母乳にはこのビタミンKが少ないんです。
さらに、母乳には、腸内のビフィズス菌を増やして腸内環境を整える作用があるのですが、これにより腸内でビタミンKを作っている細菌の発育が抑制され、ビタミンKを赤ちゃん自身で作りにくくなります。
ビタミンKの不足により、頭蓋内出血(ビタミンK欠乏症)を引き起こすことがあります。そのため、出生後すぐ・1週間頃・1か月頃の3回以上にわたって、ビタミンKシロップの経口投与が行われます。これにより、現在は、ビタミンK欠乏症はほとんどなくなっています。
ちなみにビタミンKが多く含まれる食品は、納豆です。少しでも母乳中のビタミンKが増えるように、授乳ママは納豆も頑張って食べましょう。
味が違う?初乳と成熟乳
生後10日ぐらいまでの母乳を「初乳」といい、それ以降を成熟乳といいます。成分や役割に違いがあります。
初乳の特徴
- たんぱく質、無機質が多い
- 免疫グロブリンA(IgA)、ラクトフェリン、リゾチームが多い
- 乳糖が少ない
- 胎便を出す作用がある
母乳の味は、ママが食べた物の影響を受けるので、赤ちゃんは毎回違った味を楽しむことができるのだそうです。
また、1回の授乳でも、飲み始めと飲み終わりでは、成分も味も違うので、赤ちゃんが味に飽きるということがありません。
ミルクは毎回同じ味、でも母乳はいろいろな味が楽しめるので、味覚の発達も促されそうですね。
産後のママを助ける母乳育児
母乳育児は、赤ちゃんにとって良いだけでなく、ママと赤ちゃんの絆を深めてくれます。また、産後の母体の回復を促す、乳がん・子宮がんのリスクを下げるといった効果もあります。
母乳育児ミニテスト
早速ミニテストで力試しをしてみましょう♪
母乳で元気な赤ちゃんを育てたいと願うママが9割以上
母乳は、赤ちゃんにとって必要な栄養がほぼそろっており、栄養とともに感染抑制物質も赤ちゃんに移行するため、赤ちゃんにとって理想的な栄養法です。
ミルクのようにお湯を沸かしたり、哺乳瓶の殺菌をしたりといった手間もかからず、外出先に調乳セットを持ち歩く手間もなく、経済的。
平成17年度乳幼児栄養調査では、妊婦さんの96%が母乳で育てたいと願っていることが分かりました。しかし実際に、生後1か月で母乳のみで育児をしているのは約4割。何らかの理由で、ミルクの助けを借りるママが多いのも事実です。
人工栄養(育児用ミルク)
よく言うところの「粉ミルク」ですね。
保育士試験では、「育児用ミルク」「調製粉乳」といった言葉で出題されています。
母乳のメリット(やデメリット)を長々と説明してきましたが、「人工栄養だから劣る」ということはありません。
母乳神話に付け込んで、昨年、質が悪い&管理の雑な母乳バンク問題がありましたが、「母乳で育てられない=母親失格」ではありません。粉ミルクを用いた授乳も立派な育児です。
最近では研究・開発も進み、粉ミルクの成分も母乳にだいぶ近くなってきました。
ミニテスト
人工栄養(育児用ミルク)についてのミニテストです。
→うまく表示されない方はこちら(別ウィンドウで開く)
コメント
はじめまして。いつも勉強になる内容で
苦になることなく、ミニテストも
できています。
ありがとうございます
最近、テストが表示されず
困っています。
別ウインドウで開くよう、リンクされて
いるものは大丈夫ですが…
どうしたらよいのか?
お知恵をお貸し下さい❗
お願いします。
3びきの親じかさん、コメントありがとうございます(*^_^*)
ご不便おかけして、申し訳ないです。確認しましたら、私のパソコンからも一部のミニテストができなくなっていました。
とりあえず、全てのミニテストに別ウインドウへのリンクを付けますので、ご利用くださいm(__)m
うぱみさん
ご対応いただき、ありがとうございましたm(__)m
なかなか時間がとれない日々に
焦りを感じているのですが
隙間時間に勉強できるので
本当にありがたく思っています(^-^)
内容も分かりやすく、助けていただいてます!
子育ても大変だと思いますが、
無理なさらないように。
ありがとうございます(*´∀`)
ミニテストの表示の件、原因がわかりましたので、対策しました✾ご指摘いただけて、助かりました♡